『1秒でも速く泳ぎたい』水泳選手の皆さんなら誰しもが考えた事があると思います。
速くなるために筋トレを始める選手も多いはずです。タイムを伸ばす為には、『体幹を強く』 だとか 『肩甲骨を柔らかく』 などと言う話を聞いた方も多いはずです。しかし、なぜ大切なのか?どの様に進めていけばよいのか?これらを理解してトレーニング出来ていますか??
そこで今回は、ジョイント・バイ・ジョイント理論 (Joint by Joint Theory) を基に、トレーニングの考え方や向き合い方を考えていきましょう。
水泳選手のドライトレーニングの考え方ジョイント・バイ・ジョイント理論 (Joint by Joint Theory) とは?
水泳選手のドライトレーニングの考え方ジョイント・バイ・ジョイント理論 (Joint by Joint Theory) 概論
ジョイント・バイ・ジョイント理論 (Joint by Joint Theory) とは、理学療法士の Gray Cook (グレイ・クック)によって生み出された理論です。各関節は「可動性(Mobility):動きを担う関節」と「安定性(Stability):支える役割を担う関節」 2つの役割に分かれており、これらは交互に配置されています。このバランスが崩れると身体に問題が生じるという考え方です。具体的には、以下のように各関節の機能が分かれています。
この文献によると、問題が見られる部分のみをアプローチするのではなく、問題のある部分の上下の関節の役割を十分に発揮できるように全身運動の中で練習していく必要があるとしています。
例えば、泳いでいる時に体が沈んでしまうのを何とかしたい (体幹を強くしたい) 場合、腹筋や体幹(プランク)のみを行う選手が殆どだと思います。しかし、この理論に基づいて考えていけば、体幹部分のトレーニングのみではなく、股関節周囲や胸椎の動き(機能)も改善する必要があるという事が分かります。
各関節が本来の役割をしっかりと果たすことで、以下のように考えることができます。
この理論に基づいてトレーニングをすることで身体全体の連動性が高まる。
→ 効率的な動きができる。
→ 身体を適切に (思い通りに) コントロールできる。
→ 無駄なエネルギー消費や力みを抑える。
= 理想の泳ぎを作り出しやすくなる。
身体のコントロールが上達すれば、トップ選手の泳ぎやコーチのアドバイス、Drill で練習しているテクニックなどが習得しやすい状態になり、パフォーマンスアップに繋がる。そして腰痛や肩の痛みなどの予防にも繋がると考えています。
水泳選手のドライトレーニングの考え方:ジョイント・バイ・ジョイント理論なぜ、水泳界では体幹や肩甲骨の強化が重要視されるのか??
安定性(Stability) 関節は、2パターンに分かれます。
膝・肘などは 【骨】 によって安定していますが、体幹(腰部)や肩甲骨(肩甲胸郭関節)は、【筋肉】 によって安定させるのです。
つまり、体幹(腰部) や 肩甲骨 (肩甲胸郭関節) 周囲の筋肉を強化・コントロールしなければ、身体を支えることができません。
身体を支えることができなければ、その上下の関節で負担がかかり、パフォーマンス低下やけがの発生に繋がるのです。
だからこそ、体幹や肩甲骨周囲のトレーニングは水泳選手において重要と認識されていると考えています。
水泳選手のドライトレーニングの考え方:ジョイント・バイ・ジョイント理論「可動性(Mobility)」と「安定性(Stability)」 どちらが重要なのか?
先述した様に、体験や肩甲骨周囲の安定性は重要です。しかし、結論から言うと、「可動性(Mobility)」 が優先度が高いと言われています。動きを担う関節 (Mobility) が正しく機能してくれないと、安定を担う関節 (Stability) が補うしかない状態に陥ります。このパターンによる怪我の発生が圧倒的に多く、これが 可動性(Mobility)の優先度が高い理由です。
つまり、いくら体幹や肩甲骨周囲のトレーニングを行っても、可動性(Mobility)の改善がなされていないと、トレーニングの恩恵を受けにくいと言えるのです。体幹トレーニングをしているのに、効果を実感しづらい原因はここにあるのかも知れませんね。
例えば、胸椎 (Mobility) の動きが悪いと、ローリング動作ができません。その場合、腰椎 (Stability) を反ることでローリング動作を再現しようとしてしまいます。この状態が続くことで腰痛に発展するのです。
つまり、水泳選手がドライトレーニングを行う上でまず理解しておくべきは、
① まずは、可動性 (Mobility):足関節・股関節・胸椎・肩関節 の機能改善を行う
② 次に、安定性 (Stability):体幹・肩甲骨 のトレーニングを行う
この流れを理解してトレーニングを行う事が大切だと考えています。今の自分はどちらの段階にいるのかを把握する事も重要ですね。
水泳選手のドライトレーニングの考え方:ジョイント・バイ・ジョイント理論水泳選手の為のトレーニングの組み立て方
水泳選手のドライトレーニングの考え方:ジョイント・バイ・ジョイント理論まずは、可動性(Mobility) の改善・強化のトレーニング
今回はクロールのキック動作に着目して考えていきます。
キック動作を行う場合、以下の筋肉が働くことで、股関節の可動性が保たれています。
ダウンキック (蹴り下げる) :腸腰筋 (股関節の付け根の筋肉)・大腿四頭筋 (モモ前の筋肉)
アップキック (蹴り上げる) :大殿筋 (お尻の筋肉) ・ハムストリングス (モモ裏の筋肉)
特に腸腰筋と大殿筋が重要なのですが、多くの選手が上手く使えておらず、モモ前・裏の筋肉で無理やり股関節を動かそうとするパターンが多いのです。これにより股関節の可動性が低下すると、
腰が反る (体幹が弱くなったと錯覚する) → パフォーマンスダウン or 腰痛へ発展する。
この様な展開に陥るのです。まずは重要な2つの筋肉を使えるようにしていきます。
水泳選手のドライトレーニングの考え方:ジョイント・バイ・ジョイント理論次に、安定性(Stability)の改善・強化のトレーニング
前述したように、可動性を高めたら安定性のトレーニングを進めていきます。
これは、一般的な腹筋やプランクなどでOKです。呼吸を止めず、反動を使用せずに丁寧に進めていきます。
プランク(腰部:Stability) を行う場合はもちろん、股関節のみではなく、胸椎 (Mobility) のトレーニングも行う必要がありますが、今回は割愛します。
水泳選手のドライトレーニングの考え方:ジョイント・バイ・ジョイント理論最後は可動性と安定性を噛み合わせるトレーニング
ここまで、それぞれの関節がしっかりと役割を果たせるようにトレーニングを進めてきました。
ある程度上達してきたら最後は全身を連動させていく (= 水泳使用に変換する) トレーニングを行います。
今回のテーマは水泳のキック動作なので、股関節と体幹(腰部)を噛み合させるところから進めていきます。
体幹(腰部)の筋肉でしっかりと支えていきながら、股関節周囲の筋肉 (腸腰筋と大殿筋) で適切に動かしていきます。
この様に各々の役割を意識しながらトレーニングを行う事で、筋トレを水泳に活かす事ができるのです。
因みに、最終段階は全身を連動させていきます。難易度が上がりましたね。
肩関節や股関節、胸椎はしっかりと動かし、体幹(腰部)と肩甲骨(肩甲胸郭関節)はしっかりと筋肉で支える。
今回、紹介しているのは1種目ですが、この様なトレーニングを様々な負荷・動き・方向で行う事で水泳に必要な動きを獲得し、日々の水中トレーニングの質が高まると考えています。
まとめ
今回は、水泳選手がトレーニングを行う際にどの様なことを基準に行えばよいのか?
実際に大学チームのトレーニングで取り入れているジョイント・バイ・ジョイント理論 (Joint by Joint Theory) という 考え方を紹介していきました。もちろん、アスリートに限らず水泳のマスターズ大会に出場されている成人の方々や、スイミングスクールでなかなか進級できず苦戦している子ども達まで活かす事ができる考え方です。
水泳の練習だけではなかなか解決できない問題もトレーナーの観点から紐解いていくと改善していく事もあります。
スイサポでは、様々な視点で皆さんの水泳をサポートしていきます。
水泳に関するお悩みがありましたら、ぜひスイサポにご相談ください。
~参考文献~
■ トレーニングへの共同アプローチによるグレイクックジョイントパート2 (otpbooks.com)
■ Gray CookのJoint Approachによるトレーニングのパート1 (otpbooks.com)
■ ムーブメントーファンクショナルムーブメントシステム:動作のスクリーニング,アセスメント,修正ストラテジー
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