皆さんこんにちは。スイサポの齋藤です。
都内で、大学水泳部のトレーナー兼水泳コーチとして活動しています。
トレーナーとして現場に立つ中で、トレーニング業界のトレンドやトップアスリートの取り組みを学び、それを「水泳の現場でどう活かせるか」を日々考えています。
ただ、実際に現場へ落とし込もうとすると、環境や設備の問題で再現が難しいと感じることも少なくありません。
充実した設備を持つ一部の大学や、トップアスリート向けの専門施設でなければ実施できない内容も多いからです。
そうした課題を解決する前に、今回はそもそも論として、「水泳選手が筋トレを行う目的」と「その目的を達成するために、何を行うべきなのか」 を整理していきます。
これから筋トレを取り入れようとしている選手の方、すでに取り入れているものの「何のために行っているのか分からなくなっている」という選手やコーチの皆さんに、読んでいただけたら嬉しいです。
水泳選手における筋トレの目的(ゴール)
水泳選手が筋トレを行う目的(ゴール)は、ベストなパフォーマンスを常に出せる様に適応的な身体システムを作ることです。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、噛み砕いて言えば、水泳スキルを「安定して・無意識で・崩れずに」発揮できる身体状況を作ることだと考えています。
競泳では、常に理想的な環境で泳げるとは限りません。
▶泳ぎやすいプール、そうでないプールで感覚が変わる気がする。
▶隣の選手が想定より速く、焦ってしまう。
▶他選手の波に煽られ、テンポや感覚が崩れる。
▶ゴーグルに水が入り、視界がぼやけ焦る。
▶緊張や焦りで力みが生じ、泳ぎが硬くなる。
▶大会でレースが続き、疲労が蓄積している。
こうした状況は、特別なものではなく、大会ではむしろ「普通に起こること」です。
水泳選手に求められるのは、これらの外的・内的な変化に対して、瞬時に、無意識に動作を調整し、普段通りの泳ぎを維持すること。
ベスト更新、標準記録突破、得点獲得といった結果は、その安定した発揮の延長線上にあります。
まとめると、水泳選手にとっての筋トレとは、速く泳ぐための筋肉を作ることではなく、水泳スキルがどんな状況でも崩れずに発揮されるための「土台」を作ることだと考えています。
適応的なシステムを作るためには?
適応的なシステムを作るためには、
以下の3つの要素が必要と言われています。

適応的なシステムを作るためには?身体機能

これらは、特別なトレーニングではなく、多くの選手が一度は取り組んだことのあるウエイトトレーニングや自重トレーニング、ストレッチなどで高められる要素です。
適応的なシステムを作るためには?感覚統合
感覚統合とは、「今、自分はどうなっているか」
「今、周りで何が起きているか」を同時に把握できる力です。

全ては割愛しますが、この様な内容が含まれます。
感覚統合が高まることで、環境が変わっても、感情が揺れても、自分の動きを客観的に捉え、修正できるようになるとされています。
適応的なシステムを作るためには?競技スキル
水泳練習(水中練習)は、これまでに作ってきた身体機能や感覚統合を、競技動作として実際に発揮・適応させる段階と言えます。
小難しく書くと以下のようになりますが、普段皆さんが行っている内容ですね。こちらは皆さんの想像している内容で構わないと思います。

まとめ&課題
水泳選手が筋トレを行う目的は、
「適応的なシステムを作ること」
つまり、どんな環境・状況でも、安定してベストパフォーマンスを発揮できる身体を作ることです。
そのためには、身体機能・感覚統合・競技スキル
この3つの要素を高めていく必要がある、という話をしてきました。
ここまでは整理できた一方で、同時に大きな課題も見えてきます。
課題1:やる事が多すぎる
おそらく、多くの方が感じたのではないでしょうか。こうして整理してみると、やることが非常に多い。
例えば、皆さんにも馴染みのある「身体機能」だけを見ても、基礎筋力、筋パワー、可動域、スタビリティ、モビリティ…
どこから手をつければいいのか分からなくなる、という問題に直面します。
一方で、トップアスリートの場合は、身体機能や競技スキルがすでに高い水準にあることを前提に、トレーニングが組まれているケースがほとんどです。
当然、僕たちの練習時間や環境には限りがあります。
それでもトップ選手に近づくためには、感覚のトレーニングも含めて取り組む必要がある。
この「時間は限られているが、やるべきことは多い」という矛盾の中で、
・何を優先するのか
・どんな順番で取り組むのか
・どのタイミングで何を入れるのか
を考えることが、とても重要になってきます。
実際に僕が現場でどのように計画を立てているかについては、こちらの記事でまとめていますが、まずは今回お伝えした「考え方」をベースにしてもらえたらと思います。
課題2:水泳動作とリンクしない
もうひとつの大きな課題が、「筋トレが水泳動作に直結している感覚が持てない」 という点です。
これは、多くの選手が一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
「筋トレはやった方がいいのは分かる」
でも、「水泳のどの部分に、どう活かされているのかが分からない」
そう感じてしまう理由のひとつは、水泳動作と一般的な筋トレ動作のあいだに、大きなギャップがある からです。
水中という特殊な環境、
姿勢や浮力、抵抗、呼吸、タイミング。
それらを含んだ水泳動作と、
陸上で行う筋トレの動きは、見た目も感覚も大きく異なります。
そのため、「筋トレ自体は頑張っているのに、泳ぎに繋がっている気がしない」という違和感が生まれてしまいます。
この「筋トレと水泳動作のギャップ」を、どう埋めていけばよいのか。
こちらについては、次回解説していきたいと思います。
さて、今回はここまで。
次回は、一般的なスイミングチームや水泳部の環境で、実際にどの様にこの理論を再現していくのか?
トレーニング種目の解説や考え方をお伝えしていければと思います。
それでは👋
ご予約・お問い合わせはこちらから
水泳選手向けトレーニング種目・理論紹介に関連する記事
水泳選手に「ウエイトトレーニングは良くない」という巷の噂について
多くのトップスイマー積極的に取り組んでいます。
しかし、巷では未だに「ウエイトをすると泳ぎが崩れる・硬くなる」と言う意見もあります。
最近では、ロサンゼルス・ドジャースの山本由伸投手のトレーニング方法も話題に上がりますし、「ウエイトトレーニングをしなくても結果は出せる」というコメントも再注目されています。
イチロー選手も「体を大きくするためのウエイトトレーニングはしない」と話しています。
果たしてどうなのでしょうか??
今回はそんなホットな話題について考察していきたいと思います。
意識するvs意識しない|タイムを上げるには結局どっち?【Vol.1】
「肩甲骨から動かして」「体幹を絞めて」
「キャッチの角度はこうして」
「〇〇を意識して」というタイプのアドバイス。
「考えすぎだよ、もっと自然に!」
「レース中はそんなこと考えないでしょ?」
「意識してはいけない」というアドバイス。
真逆のアドバイスですが、どちらも一度は聞いた事があると思います。
どちらを参考にすれば良いのでしょうか?
今回は、このテーマの解決の糸口を探すために、運動制御理論 前編をご紹介していきます。
水泳選手にも知って欲しい【トレーニングの原理・原則】
水泳選手に限らず、トレーニングを行う全ての方に共通する基本的な考え方です。
トレーニングの理論を知り、練習メニューを意図を汲み取る事ができれば、トレーニングの効果を飛躍的に引き出す事が期待できるのです。スイサポでは、皆さんが自立して練習に取り組める様にサポートしてまいります。何かお困りな事があればお気軽にご相談ください。







