今回はトレーニング理論のお話し。(少し長いです。)
どんなトレーニングも効果を最大限引き出したいですよね。しかし、効果を引き出すにはある程度のルールがあり、それを知っているかどうかで大きな差が生まれます。そこで今回は、トレーニングの原理・原則についてまとめていきます。
水泳選手にも知って欲しいトレーニング理論原理と原則
まず、言葉の定義から進めましょう。似た様な言葉ですが、以下の様な違いがある様です。
原理:普遍的で変わらないもの
原則:状況に応じて適用されるルールや指針
トレーニング理論において、原理は3つ。原則は5つあります。それぞれ確認していきましょう。
水泳選手にも知って欲しいトレーニング理論トレーニングの原理
まずは、トレーニングの原理(普遍的なルール)についてまとめていきましょう。
ここで言う普遍的なルールとは、『どんな理屈で身体能力が上がるのか?』 と言う事です。
水泳選手にも知って欲しいトレーニングの原理①過負荷の原理(Principle of Overload)
【トレーニングの効果を引き出す為には、身体に一定の負荷をかけ続ける必要がある】
トレーニングによって筋肉や身体に一定以上の負荷をかけることで、体力や筋力が向上するという考え方です。この負荷が現在の能力を超えている必要があり、適切な過負荷がかかることで身体が適応し、より強くなるプロセスが始まります。
水泳選手にも知って欲しいトレーニングの原理②可逆性の原理(Principle of Reversibility)
【トレーニングを中断すると、その効果は徐々に失われる】
トレーニングを中断したり、負荷が減少した場合、得られたトレーニング効果が徐々に失われるという考え方です。これは、身体が常に外部からの刺激に適応するために変化し続けるという人間の特性に基づいています。
これは「ディトレーニング効果」と呼ばれ、特に長期間休養を取った場合、筋力や持久力の低下が顕著に現れます。
水泳選手にも知って欲しいトレーニングの原理③特異性の原理(Principle of Specificity)
【トレーニングは競技の特性に合わせたものでなければならない】
トレーニングの効果が、そのトレーニングで行われた運動や動作に特有であることを意味します。
筋肥大(身体を大きくしたい) なら、それに見合った負荷やトレーニング種目・方法を。
心肺機能を高めたいなら、それに見合った負荷やトレーニング種目・方法を。
クロールやバタフライに繋げたいなら、それに見合った負荷やトレーニング種目を。
つまり、特定のスキルや能力を向上させるためには、そのスキルや能力に直接関連したトレーニングを行う必要があるという考え方です。
水泳選手にも知って欲しいトレーニングの理論超回復理論とトレーニングの原理
超回復理論とは?
ここまで、トレーニングの原理 (普遍的なルール) について話をしていきましたが、これは超回復理論とも密接に関係します。
超回復とは、トレーニングによって一時的に低下した身体の能力が、休息期間中に回復し、トレーニング前の状態よりも向上する現象のことです。
画像1の様に🔴のポイントでトレーニングを開始した場合、疲労により一時的に身体能力が低下します。
しかし、ある段階で🔴のポイントを上回って回復します。これが超回復です。
この段階(🔵のポイント) で2回目のトレーニングを行うと身体能力は向上しますが、トレーニングを継続しないと、元の状態(🟢のポイント)に逆戻りしてしまいます。
このプロセスが繰り返されることで、筋力や持久力が徐々に高まり、トレーニング効果が蓄積されていきます。
因みに、適切なタイミングとは、トレーニング後24~72時間(週に2~3回) 後にトレーニングを行う事が目安とされています。
これはトレーニングの原理にも当てはまりますね。
過負荷:今のレベルより高い負荷を与える事。
可逆性:トレーニングは適切なタイミングを見て継続しないと元通りになってしまう事。
特異性:目的に沿ったトレーニングを継続して行う必要がある事。
この様に、トレーニングの原理(身体能力が上がる理屈)を理解する事は、水泳のパフォーマンスupには欠かせないのです。
水泳選手にも知って欲しいトレーニング理論トレーニングの原理
最後に、トレーニングの原則(状況に応じて適用されるルールや指針) をまとめていきます。
ここでは主に『方針』と言う言葉に趣を置いており、トレーニングの原理から外れない様にする為に、どの様な考えを持って練習に取り組むのか。または、練習計画・メニューを組み立てていく為のヒントと捉えて良いです。
水泳選手にも知って欲しいトレーニングの原則①全面性の原則
バランスの取れたトレーニングを行うことが重要であるという考え方です。特定の能力や筋肉だけを鍛えるのではなく、全身の筋力、持久力、柔軟性、協調性など、あらゆる面を均等に強化することが、パフォーマンスの向上やケガの予防に繋がります。
水泳選手の皆さんに意識して欲しいのは、上手く時間を工面して取り組んで欲しいという事です。
トレーニング:水中練習とは別で週2回実施する。
ストレッチ:練習後に行う。
ドライトレーニング:入水前の10分15分を活用して行う。
これくらいシンプルで大丈夫です。うまく工夫して行う事を意識してみて下さい。
水泳選手にも知って欲しいトレーニングの原則②個別性の原則
トレーニングが個々の選手の体力、能力、目標に合わせて調整されるべきだという考え方です。人それぞれの体力や能力、成長速度に違いがあるため、トレーニングプログラムもそれに応じて個別化する必要があります。
水泳選手の皆さんに意識して欲しいのは、自分の現状を把握し、目標に向けて今は何が必要なのか?これを考えて欲しいという事です。ただやみくもに情報を集めるのではなく、今の自分に必要な内容を吟味して取り組んでいく意識を持って欲しいです。
水泳選手にも知って欲しいトレーニングの原則③意識性の原則
トレーニングを行う際に、目的や効果を意識して取り組むことが重要だという考え方です。正しいフォームや動作を意識することで、効果を最大化し、怪我を予防することができます。
水泳選手の皆さん意識して欲しいのは、そのトレーニングの意図をしっかりと聞いて取り組む事です。
やはり、「この効果を出すために、ここを頑張る必要がある」 これを理解するか否かでトレーニングの質が大きく変わります。
水泳選手にも知って欲しいトレーニングの原則④漸進性の原則
トレーニングの強度や負荷を段階的に増やしていくことが重要だという考え方です。無理のない範囲で少しずつ負荷を増やすことで、身体が適応し、より高いレベルのパフォーマンスを引き出すことができます。
水泳選手の皆さんに意識して欲しいのは、現状に満足せず、どんどんチャレンジして欲しいという事です。
例えば、Dive練習の時には常にベスト更新を目指し、1本でも多く継続させる。
ウエイトトレーニングであれば、先月より1kgでも重い負荷に挑戦するなど当たり前な事で大丈夫です。
水泳選手にも知って欲しいトレーニングの原則⑤反復性の原則
トレーニング効果を得るためには、同じ動作やトレーニングを繰り返し行う必要があるという考え方です。反復することで技術が洗練され、身体にその動作が定着し、競技におけるパフォーマンスが向上します。
選手の皆さんに意識して欲しいのは、地道にコツコツ取り組んで欲しいという事です。
既存の種目に飽きが来て真新しいトレーニング方法に目移りしたり、試合結果に伴う焦りや不安に駆られたりすると、ついつい種目変えてしまいがちですが、しっかりと計画を立てた上で一定の期間は反復することが大切です。
以上がトレーニングの原則です。全面性の原則に基づけば、特定の筋肉や能力だけに偏らず、全体的なバランスを重視したトレーニングを行う方針を立てることができますし、漸進性の原則に従えば、負荷を徐々に増やしながらトレーニングを進める計画を立てることができます。
つまり、これらの原則は、トレーニングの「どうやって進めるか」を決定するための考え方や方針を示すものです。
まとめ
いかがでしょうか?トレーニングの理論を知り、練習メニューを意図を汲み取る事ができれば、トレーニングの効果を飛躍的に引き出す事が期待できるのです。スイサポでは、皆さんが自立して練習に取り組める様にサポートしてまいります。何かお困りな事があればお気軽にご相談ください。
~参考文献~
1. 公認アスレティックトレーナー専門科目テキスト(6)予防とコンディショニング
2. NSCAパーソナルトレーナーのための基礎知識 第二版 ジャレッド・W.コバーン
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