いよいよ夏本番!ここ最近、プールで遊ぶ子ども達も増えてきました。
学生スイマーも夏の全国大会に向けてラストスパートをかけています。そして何よりオリンピック!競泳日本代表の泳ぎを見ていると、色々と調べて実践したくなります。しかし、調べている内に情報量が多くなりがちで、何をどの様に意識すれば良いのか分からなくなりますよね…。
●スイミングスクールに通う子ども達
●趣味で水泳をしている成人の方々
●学生アスリート・ジュニアアスリート
今回はこれら全ての泳力の方に共通する基本的な知識をご紹介。
水泳とはどんなスポーツなのかを理解していきましょう。
水泳はどんなスポーツなのか?
水泳はどんなスポーツなのかまずは水の特性を理解するところから
結論から言うと、水泳とは「いかに抵抗を減らすか」 そして 「いかに抵抗を利用するか」
この2つを突き詰めていくスポーツです。これは、競泳選手だけでなく、スイミングスクールに通う子どもや成人の水泳教室に通う大人の方、全ての年代・レベルの人に共通する考え方です。
水泳を理解し、効率的に泳ぐためには「水の特性」を理解することが重要です。
そこで、以下に水の特性を4つまとめてみました。
水泳を上達するための考え方を理解していきましょう。
水泳はどんなスポーツなのか水の特性1.抵抗
水中で物体が移動するとき、水はその物体に様々な抵抗を与えます。
この抵抗を減らすことが水泳では重要です。抵抗は主に以下の3つに分類されます。
●形状抵抗
水中姿勢や身体の大きさによって生じる抵抗の事です。
水が物体の周りを流れる時、その形状が水の流れ乱すことで生じます。
また、物体が大きいほどこの抵抗は増える傾向にあります。
つまり、ストリームラインを維持することでこの抵抗を減らすことができます。
形状抵抗に近い概念として「前方抵抗」「衝突抵抗」があります。
よく耳にする表現なのでこちらも解説しておきます。
※前方抵抗 : 物体の前方部分が水に対してどれだけ抵抗を受けるかに関連しています。
ストリームラインが奇麗に保てていればこの抵抗は減りますし、逆に崩れていれば衝突する面積が増えるのでこの抵抗も増加します。
※衝突抵抗 : 物体が水中を移動する際に水(粒子) と直接衝突することで生じる抵抗です。物体の速度が速いほど衝突抵抗が多くなります。
●摩擦抵抗
泳者の皮膚と水との摩擦で生じる抵抗です。
毛を剃る ・ スイムキャップを被る ・ 競泳水着を着用するなどの方法でこの抵抗を減らすことができます。
また、摩擦抵抗に近い概念として「表面抵抗」があります。
こちらは、広義の概念であり、摩擦抵抗や後述する粘性抵抗なども表面抵抗の一部と考えることができます。
●造波抵抗 (波抵抗)
泳者が作る波によって生じる抵抗です。
水面に近いほど、また泳速が上がるにつれて波(抵抗)は大きくなります。
スタートやターンの直後に水中潜ること ・ 力みの少ないスムーズな泳ぎを維持することでこの抵抗を減らすことができます。
これら3つの抵抗を限りなく少なくすることが水泳には不可欠なのです。
水泳はどんなスポーツなのか水の特性2.浮力
浮力とは、その名の通り物体が水に浮かぶ力の事です。
浮力を最大限活かすことで、以下の3つのメリットがあります。
① 水面に近い位置で泳ぐことができ、衝突抵抗を最小限に抑えることができます。
② 水面に浮かぶ事で体の一部が空気中に出ます。それにより水面との接触が減り摩擦抵抗を軽減することが可能です。
③ 上記の理由から、エネルギー消費が抑えられ長時間泳ぐことが可能になります。
つまり、浮力を活用できれば「抵抗を減らすことが可能」なのです。
水泳はどんなスポーツなのか水の特性3.粘性
粘性とは水の分子間の摩擦によって生じる抵抗の事です。
水が流れる時に、その中水の粒(分子)が滑ったり、くっついたりすることで流れにくくなることを言います。
例えば、蜂蜜をスプーンで混ぜると、凄くネバネバして混ぜにくいですよね?
これは、蜂蜜の(分子)同士がとても強くくっついているからです。
同じように水をスプーンで混ぜると、蜂蜜より遥かに混ぜやすいですが、それでも少しだけ抵抗を感じます。
これが水の粘性です。
この粘性は水泳において、 「抵抗を減らすこと」 と 「抵抗を利用すること」 の2つに関与します。
●抵抗を減らすためには
手や脚を水中で動かすと、水の粒(分子)が手脚にくっついて抵抗になります。
これを防ぐために 「背泳ぎの入水は小指から入れる」 「バタフライのフィニッシュは親指から抜く」 などのテクニックが用いられます。
●抵抗を利用する場合
逆に粘性抵抗をうまく利用すると、手で水をしっかり押せるので推進力(前に進む力)を生み出すことができます。
推進力を得るための スカーリング がまさに粘性抵抗をうまく利用するテクニックです。
水泳はどんなスポーツなのか水の特性4.温度 (水温)
水温も水泳を行う上で理解しておくべき特性です。
水温が水泳に関与する内容としては大まかに2つあります。
●物理的性質の変化
1.密度の変化:水温が低いと 水の密度(硬さ)は高くなり、逆に水温が上がると密度は低くなります。高密度の水は物体をよりよく支えるため浮力が増加します。
2.粘性の変化:水温が低いと 水の粘性は高くなり、逆に水温が上がると粘性は低くなります。粘性が高い水は、動く際に抵抗が増えます。
●熱伝導性
水は比較的早く熱を伝えるため、温度変化に敏感です。冷たい水は体温を奪う速度が速く、温かい水は体温を保持しやすいです。
これらを踏まえて目的に応じて水温は設定されていきます。
【競技会場の温度】
水温:25~28度 / 競技者が最もパフォーマンスを発揮しやすい温度と言われています。
温度が高すぎると体温が上昇し、低すぎると筋肉が硬くなりやすいです。
また、水の密度・粘性が高くなるため、泳ぐ際に適度な抵抗がかかり、身体も浮きやすくなるという部分でも利点があります。
【リラクゼーションの温度】
水温:28~32度 / 温かい水は、体をリラックスさせるのに最適です。
高めの水温は筋肉を柔らかくし、リラックス効果を高めるため、ストレッチや軽い運動に適しています。
【民間プールの温度】
水温:26~30度 / 民間プールでは、利用者のニーズに応じて幅広い温度が設定されます。
子どもから大人まで、様々アクティビティに対応できる温度です。
水温については、我々では変えることができない領域ですが、温度が適切であればパフォーマンスに影響するいう事だけ覚えておいてください。
水泳とはどんなスポーツなのかまとめ
いかがだったでしょうか?
水泳とは「抵抗をいかに減らすか」 「抵抗をいかに利用するか」 というスポーツであること。
そして、 「水の特性」 を理解することが大切だと話してきました。
水の特性を理解することで、この練習やテクニックは何したいのか?
抵抗を減らす練習なのか? 逆に 抵抗を利用する練習なのか? を理解するヒントになり得ると同時に、
今の自分にはどちらの練習が必要なのか? を整理する手がかりにもなります。
ただ泳ぐだけではなく、しっかりと目的を持って練習することで上達が早くなると考えています。
とはいえ、初めは理解するのにも時間がかかるかと思いますので、気になる部分がございましたら、ぜひスイサポにご相談下さい!!
~参考文献~
●スイミングファステスト / E・W・マグリシオ / ベースボールマガジン社
●水泳指導教本 第三版 / 公益財団法人 日本水泳連盟
●体育の科学 2016 Vol.66 水泳・水中運動の科学 / 杏林書院
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